2006年11月25日

グロテスク

<2006年6月30日読了>

一つの言葉を語源由来辞典より。

グロテスク(grotesque)

グロテスクとは、気味が悪く異様なさま。怪奇なさま。グロ。

<グロテスクの語源・由来>
グロテスクは、フランス語「grotesque」からの外来語。
「grotesque」は、15世紀にローマの地下遺構で発見された古代の模様に由来し、イタリア語で「古代遺跡」「洞窟」を意味する「grotta」から「grotteschi」と名付けられ、フランス語に入り「grotesque(グロテスク)」となった。

この模様は、動植物や人間などを曲線をあしらった異様な模様で、「グロテスク様式」として、ルネサンス・バロック芸術で好んで取り入れられた。
その後、文化や思想など芸術以外の分野でも、「グロテスク」という語が用いられ、異様で不気味な印象を与えるものを指す言葉となっていった。
日本語では、「グロテスク」を略して「グロ」とも言い、「グロい」という形容詞化した言葉も生まれた。

グッチャグチャ作家と命名した桐野夏生『グロテスク』です。この題名、それだけでわくわくするほどのグッチャ度が期待できますw







『OUT』 『柔らかな頬』など、単なるミステリーにとどまらない作品を生み出してきた桐野夏生が、現実に起きた事件をモチーフに新たな犯罪小説を書き上げた。自身をして「その2作を超えて、別のステージに行ったかな」と言わしめた作品だ。

主人公の「わたし」には、自分と似ても似つかない絶世の美女の妹ユリコがいた。「わたし」は幼いころからそんな妹を激しく憎み、彼女から離れるために名門校のQ女子高に入学する。そこは一部のエリートが支配する階級社会だった。ふとしたことで、「わたし」は佐藤和恵と知り合う。彼女はエリートたちに認められようと滑稽なまでに孤軍奮闘していた。やがて、同じ学校にユリコが転校してくる。

エリート社会に何とか食い込もうとする和恵、その美貌とエロスゆえに男性遍歴を重ねるユリコ、そしてだれからも距離を置き自分だけの世界に引きこもる主人公。彼らが卒業して20年後、ユリコと和恵は渋谷で、娼婦として殺されるのだった。

いったいなぜ、ふたりは娼婦となり、最後は見るも無残な姿で殺されたのか。そこに至るまでの彼女たちの人生について、「わたし」は訳知り顔で批判を込めて語っていく。しかし、ユリコと和恵の日記や、ふたりを殺害した犯人とされる中国人チャンの手記が発見されるに従い、主人公が本当に真実を語っているのか怪しくなってくる。つまり「わたし」は「信用できない語り手」だということが明らかになってくるのだ。その主人公に比べ、日記であらわになるユリコと和恵の生き様は、徹底的に激しくそして自堕落である。グロテスクを通り越して、一種の聖性さえ帯びている。

読み手は何が真実か分からなくなるかもしれない。しかし読み終わったとき、この物語に不思議な重層性を感じるだろう。(文月 達)

出版社/著者からの内容紹介
「私ね、この世の差別のすべてを書いてやろうと思ったんですね。
些細な、差別と思っていないような差別。
お金も美醜も、家柄も地域も、勉強できるできないも、
全部の小さな差別をいれていこうと思ったんですよ。
エリートになればなるほど、たぶんものすごい差別が
いろいろたくさんあると思うんです。
競争が激しい。それが女の子の場合、もっと複雑になるというのかな。
厳しいんじゃないかと思うんですよ、女の子は。」
(「本の話」7月号 『グロテスク』著者インタビューより)

【本書の内容】
世にも美しい妹ユリコを持つ「わたし」は、ユリコと離れたい一心でQ女子高を受験して合格し、スイスに住む両親と離れて祖父とふたり暮らしを始める。エスカレーター式の名門Q女子高は厳然とした階級社会であった。佐藤和恵という同級生が美人しか入れないという噂のチアガール部に入ろうとして果たせず、苛立つのを、「わたし」は冷やかに見守る。
夏休み前に母が自殺したという国際電話が入る。ユリコが帰国するというので、「わたし」は愕然とする。同じQ女子高の中等部に編入したユリコは、その美貌でたちまち評判になるが、生物教師の息子木島と組んで学内で売春し、それがばれて退学になる。和恵はQ大学から大手のG建設に就職した。―そして二十年後、ユリコと和恵は渋谷の最下層の街娼として殺される。


内容(「BOOK」データベースより)
光り輝く、夜のあたしを見てくれ。堕落ではなく、解放。敗北ではなく、上昇。昼の鎧が夜風にひらめくコートに変わる時、和恵は誰よりも自由になる。一流企業に勤めるOLが、夜の街に立つようになった理由は何だったのか。『OUT』『柔らかな頬』を凌駕する新たな代表作誕生。

内容(「MARC」データベースより)
美貌の妹ユリコと名門女子高の同級生和恵。最下層の娼婦として孤独でセンセーショナルな死を迎えた二人を取巻く黒い魂のドラマ。『週刊文春』連載を単行本化。



読んだ率直な感想は、グロい!(そのままじゃん!!)このグロさは凄まじいです。何がグロいかというと、人間の心の中のグロさ、階級社会という制度そのものの生み出すグロさ、その階級社会で這い上がろうとする人の心のグロさ、それを白けた目で見る傍観者たろうとする精神のグロさ、羨望を捻じ曲げた心で捕らえようとするグロさ、中国という社会から飛び出て日本の裏社会で生きていくグロさ。。。グロが詰まりまくっていて、それを見事に料理する桐野氏のグロさは見事なものです!

主人公が高校から通うQ女子高はエスカレーター式で下から入ってきた者が上であるという歴然とした階級があるとありますが、これは私の母校が舞台となっていることは明らかです。なので、物凄く肯けます。

怪物のような恐ろしい美貌を持ったハーフのユリコ、その姉で捻じ曲がった悪意の塊の主人公、外部生で自分が美しくないことや序列などが理解できない和恵、娼婦殺しで中国から逃げてきた極悪人のチャンが語り部となって話は進みます。それぞれの目を通しているので、当然それぞれのバイアスがかかり、色々なグロテスクが白日の下に晒されていく様は圧巻です。

グロテスクというタイトルですが、行為のグロさではなく、誰の心にも潜むグロテスクなものが、歪んだ社会習慣・観念、理不尽と思われる階級社会、そこに置かれた環境、僻み、妬み、嫉みによってジワリジワリと滲み出てくる小説で、暴力的な描写とかはありません。心にズシンと響き、自分の中のグロテスクなものを省みるような作品でした。

<桐野夏生HPより抜粋>

作者のコメント
 有名な事件を素材にして小説を書くのは、これが初めてです。『柔らかな頬』は特定の事件をモデルにしているのではなく、子供の失踪について書こうという最初の考えがあって、それから取材を始めているので、今回は全く逆のパターンです。
 どうして、あのOL殺人事件を取り上げたのか。よく聞かれる質問ですが、私は事件当時、マスコミがなぜ熱狂して報じているのか、全く理解できませんでした。一流企業勤務、一流大学卒、夜の街娼。こういう「記号」に男たちが発情しているような印象を受け、好奇心だけで被害者の身許や行動を露わにしようとする様が非常に不愉快だったのです。もしかすると、世間の男たちを発情させる「記号」そのものが、彼女を苦しめ、夜の街に立たせるに至ったのではないか、という印象を強く持ちました。だから女の私が書いてみようか、と思った次第です。
 とはいえ、私が書くことによって、要らぬ関心を煽ったり、関係者の方に迷惑がかかるのではないかということが不安でした。しかし、現代社会に生きる女の辛さや息苦しさ、性という不可思議なものに侵される思いを何とか書き切れば、違うものも見えてくるのではないか、と冒険することを決心したのです。
 執筆前に、幾つか仮説を立てました。彼女は街娼することによって、むしろ解放感を持ったのではないか、彼女はその解放感によって昼の生活を崩壊させたのではないか、彼女をそこに至らしめたのは、高校時代に何か嫌なことがあったのではないか、頑張り続けた彼女の考え方そのものに、どこか無理があったのではないか、などです。そうすれば、今の社会に置かれている女性の姿が少しは現れてくるのではないかと考えました。
 この仮説に従って、主人公の高校時代から書いてみることにしました。そのまま時系列順に書いたのでは、主人公の姿が立体的に見えてこないので、醜い姉と美しい妹の姉妹、という非常に小説的な人物を造って絡め、醜い姉を「語り部」にして物語を語らせようと思いました。最後は、主人公・和恵の「売春日記」を書きたかったので、一人称のオンパレードです。姉である「わたし」の語りが主になり、「ユリコ」の手記によって売春というもの、常に男から評価される女という立場を語らせ、チャンの上申書で異世界からやって来る男を語らせ、最後は和恵の崩壊する過程となります。「グロテスク」というタイトルは、醜さ、歪んだもの、というより「怪物」のイメージです。
(インタビュー・構成 ミッシー・鈴木)


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ラベル:桐野夏生
posted by seven at 14:38| ニューヨーク ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 桐野夏生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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