2006年12月11日

光源

<2006年7月26日読了>

桐野夏生「光源」



出版社/著者からの内容紹介
こんな奴ら見たことない!
映画撮影とは、監督、カメラマン、プロデューサー、俳優が各々の思惑と事情を抱えてぶつけ合う光の乱反射。直木賞受賞後長篇第一作

内容(「BOOK」データベースより)
誰よりも強く光りたい。元アイドルの佐和が自分を主張し始めた途端、撮影現場は大混乱。苦り切る人気俳優、怒る監督、傷付く女プロデューサー、佐和に惹かれるカメラマン。金、名声、意地、義理、そして裏切り。我執を競い合って破綻に向かう、世にも身勝手な奴らの逆プロジェクトX物語。直木賞受賞後第一作。



この作品は誰が主人公なのか読み勧めていくうちに分からなくなります。それぞれの視点から物語が進む中、話が過去に戻ったり、回想となったりしていきます。「ポートレート24」という映画作りの話ですが、低予算でも一流俳優を主人公にして一発当てたい女性プロデューサー優子、優子に捨てられた後にメインカメラマンとなった有村、映研上がりで処女作を任せられた三蔵、アクション映画など三流俳優だったのが優子に発掘してもらい時代を代表する俳優になった高見、彼らがメインとなって映画は作られていきます。

現実の映画作成に思ったとおりに自分の意見を通せずに悩みはじめる三蔵、そこに元アイドルでヌード写真を出したばかりの佐和が登場し、自分の意見を言い始めたところから「物語」そして「映画作成」が壊れていきます。ここからのキーワードは「我執」です。皆自己を出し始める。他人の我執で嫉妬を感じてどんどんと伝播していきます。何かをチームで作る時はやはり何らかの「妥協」が必要であるのですが、それぞれが「我執」することで破壊へとつながっていく。。。そして破壊から生み出されるもの。

その「我執」を生み出すものは、自分が一番輝いていたいという「光源」であり、それぞれが光始めると生み出されるものはその影である闇へと落ちていく。結局最後には裏切り、打算、信頼の喪失。。。最後の最後には新たな我執が生まれるのですが、それは救いのない悪魔のような世界であって、スパイラルに陥って行きます。

この本もそうですが桐野氏が紡ぐ小説の登場人物にはリアリティを感じます。無論、実際にいるであろうというリアルというよりも、感情の動きというのか、誰もが持つ「光り輝きたい」という普段は人に見せないような欲望。

相変わらずグッチャグチャ、ドロドロとしていますが、こうした虚構の世界の中のリアリティを読むと、意外な爽快感を感じます。そして読むほどに深みが増していく作家だなと。

ラベル:桐野夏生
posted by seven at 01:59| ニューヨーク ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 桐野夏生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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