桐野夏生「残虐記」
桐野夏生

出版社/著者からの内容紹介
薄汚いアパートの一室。中には、粗野な若い男。そして、女の子が一人――。
失踪した作家が残した原稿。そこには、二十五年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。最近出所した犯人からの手紙によって、自ら封印してきたその日々の記憶が、奔流のように溢れ出したのだ。誰にも話さなかったその「真実」とは……。一作ごとに凄みを増す著者の最新長編。
これは色々な人のレビューを見たのですが、酷評です。実際にあった少女監禁事件をモチーフとしているため、被害者等に対する好奇心のみが動機であって、後味が悪いというものでした。これに対抗するためか、桐野さんは自身のHPで次のように書いています。
作者のコメント
初出は「週刊アスキー」誌で、5カ月間の連載でした。連載時のタイトルは「アガルタ」。 「アガルタ」というのは、チベットの地底にある桃源郷という意味だと聞いています。
当初は3カ月の連載予定だったのですが、書き切れずに5カ月まで延長していただきました。が、それでも終わらず、無理矢理やめた形になりました。 その連載部分が、主人公の女性作家、小海鳴海の小説内小説の部分に当たります。
改稿するに当たって、その連載部分をどう書き直すか、悩んだのですが、結果、いじるのはやめにしました。当時のテンションや文体を再現するのが難しかったためです。一年以上経った連載作品を直すのは、作者自身も変化しているのでかなり難儀な作業になるのです。 それで、最初と最後に書簡を付け足して、全体の構成を変えることにしました。小説を、別の小説でサンドイッチしたのです。初めての試みでしたが、その作業によって全く違った小説に生まれ変わった感があって、面白かったです。
その時、タイトルも「アガルタ」から、「残虐記」に変更しました。連載前の目論見では、主人公がケンジと過ごす日々が、この世のものではない何か、 というイメージがあったので、そのタイトルは悪くないと思ったのですが、改稿によって決定的に違和感が生じてきたのです。主人公の経験は、与えられた美しい桃源郷などではなく、もっと烈しいものではないか、と考えました。しかも、書簡部分の付け足しによって、全く違うものに生まれ変わってしまった。だから、インパクトのあるタイトルの方がいいと思いました。
ちなみに、「残虐記」は、谷崎潤一郎の未完に終わった小説のタイトルです。 他人の小説のタイトルを拝借するなど、こんなことは滅多にしないのですが、魅力的なタイトルなので、どうしても使ってみたかったのです。 あらゆる意味で、珍しい試みをした作品です。
監禁された少女の心理を綴る作品で、その少女は高校1年生の時に監禁したケンジと隣の部屋に住んでいたヤタベさんの少女監禁前にあった話を創造して世に出るという小説の中に別の小説が登場します。この試みは正直凄いなと感じました。虚構の世界である小説の中に同時並行的に小説を見せることで、妙なリアリティを感じさせます。
確かに、「グロテスク」
ただ、桐野マニアじゃないとお勧めできないかな・・・とやや微妙ではありますが、私には1日で読み終えてしまった興味深い作品でした。
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