2006年12月11日

ダーク

<2006年9月24日読了>

桐野夏生「ダーク」

 

出版社/著者からの内容紹介
40歳になったら死のうと思っている。

お前に何が起きた。
お前は何をしに来た。

120万読者を待たせていた、壮大なるミロの物語
MIRO’s EXPERIENCE 最新作!

40歳になったら死のうと思っている。
型に流し込まれたばかりのコンクリートが次第に固まるように、私の決意も日に日に水分や気泡が抜け、硬化していく。死ぬと決めてからの私は、気持ちが楽になった。




これぞ桐野夏生の真骨頂!とでもいうべき作品でした。せっかくなので、ミロ・シリーズのおさらいを。

ミロ・シリーズはデビュー作「顔に降りかかる雨」で村野ミロという女性が探偵になる前、父親の村善こと村野善三が探偵を引退しても気にかけるというもの。スリルある展開でした。

次作の「天使に見捨てられた夜」では探偵となったミロが端正な容姿をしたゲイの隣人トモさんの助けを得ながら、話が進みます。

村善が探偵になる前の週刊誌のトップ屋だったサイド・ストーリーが「水の眠り 灰の夢」で、村善が非常に魅力的に描かれています。

短編集の「ローズガーデン」では少しずつ話が壊れていきます。でも、まだ探偵としての話の補足なので、続き物として読み進むことができます。

そして今回の「ダーク」によって、桐野さんは全てを崩壊へと向かわせました。完全なるデストロイヤーです。単行本の帯に書いてあることから、中が想像できると思いますが、上巻は「名前、肉体、そして魂。すべてを葬り去りたい。彷徨する魂」、下巻は「姦淫、強欲、そして殺人。でも罰は絶対に受けない。点変する運命」です。

せっかく築き上げてきたキャラクターたちを「ダーク」によってこてんぱんに叩き潰しています。それぞれが堕落していくのですが、長年にわたって愛されてきたミロとトモさんの点変ぶりには、ファンだった読者からは相当の議論が沸き起こったということです。

村善の恋人の久恵と除という韓国人が登場するのですが、彼らの過去を丁寧に書いてあるので、ストーリーへの深みが与えられていきます。特に除が光州事件で死に掛けた物語は凄みをも与えています。

キャラが壊されていくことに戸惑いながらも、ミロという女性の強さに感嘆しました。彼女はどこまでも強く何にも流されない。死のうと思っていたのに、どこまでも生への執着が凄い。次作へとつながる終わり方のため、また新作が出たら読んでみたい一品でした。

参考までに桐野さん公式HPより抜粋です。

※以下、ネタバレ注意!

作者のコメント
講談社の「in-pocket」という月刊誌に2年半連載した後、最終章だけ「小説現代」に書き下ろしました。つまり、3年半の長きにわたった連載になってしまった訳です。勿論、ミロシリーズの続きとして書いたのですが、連載の開始に当たってひとつだけやめようと思ったことがありました。新たな事件が起きて探偵のミロが解決し、成長していく、という探偵小説としてのパターンでした。それよりは、村野ミロという一人の女の同時代進行の物語にしようと思ったのです。どこへ行くかわからないミロの生き方を淡々と書いていき、読者の方がミロに反発したり、面白がったり、見守ってくれたらいいな、と思ったのです。というのも、書いている私自身が変化するので、ミロがこれまでと同じ女でいるはずはないと思ったからです。

結果、ミロは成瀬の死を知って狂乱し、義父の善三の死に関わり、金を盗んで韓国に逃げ、そこで出会った徐鎮浩と暮らし始めることになりました。殺人、覚醒剤、レイプ、出産、逃亡。思ってもいなかったダークな展開に、私でさえも驚くばかりです。物語が勝手にダークになっていくのは、過去、私がミロを捨て去ろうとしたことがあるので、ミロが作者に歯向かっているのかもしれません。面白い経験でした。

シリーズの次作は、ハルオを生んだミロが沖縄の地でサバイバルしていく物語になるでしょう。ミロに何が起きるのか、新たな出会いはあるのか。そしてレイプの結果生まれたハルオとの関係は。大阪刑務所に収監された徐はもう一度ミロと会えるのか。我ながら先の読めない展開に驚いております。ご期待ください。
(インタビュー・構成 ミッシー鈴木)




もはやミステリーでも探偵物でもなくなったミロ・シリーズはどこに向かっていくのでしょうか。作者でさえ分からない展開ですが、やはり崩壊へと向かうのか・・・


ラベル:桐野夏生
posted by seven at 04:32| ニューヨーク ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 桐野夏生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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