2006年12月11日

ファイアボール・ブルース

<2006年10月26日読了>

桐野夏生「ファイアボール・ブルース」



出版社/著者からの内容紹介
リングの女王・火渡抄子と付き人の近田は、外人選手の失踪事件に巻き込まれる。女子プロレス界に渦巻く陰謀を描く長篇ミステリー

桐野夏生公式HPより

弱小団体に所属する孤高の女子プロレスラー、火渡抄子と付き人の「自分」。
興業のいかがわしさと試合の熾烈さを縫って起きる事件。
女にも荒ぶる魂があることを証明した初の女子プロレス小説。


作者のコメント(桐野夏生HPより)

 ファイアボールというのは、薔薇の品種です。真っ赤な大輪で、その写真を見ている時に、このタイトルが浮かびました。従って、「火渡抄子」という女主人公の名前は、タイトルによって考えられたものなのです。取材はLLPWという女子プロレス団体の試合を見ることに終始しました。そのうち神取忍選手に惹かれ、火渡抄子はそのイメージで行こうと決めました。
 一番苦労した点は、プロレス技をどう書くか、ということに尽きました。もともとやったことのないことを書いている訳ですし、想像もできない。しかも、それぞれの選手の得意技とかけ方はわかっても、ひとつの試合の流れを書くのは難しかったです。選手が自分の試合をどう組み立てるか、が選手のセンスと頭にかかっているからです。試合の組立と選手の人格と性格。そして能力。これらを書き分けて、キャラクターを作らなくてはならない。至難の業でした。でも、ビデオを繰り返し見て、スローモーションにしたり、ストップモーションにしたり、何とかクリアしたように思います。(桐野)



これは桐野作品の中では異質と言えそうな作品でした。割と初期なのですが(「OUT」よりも前)、ミロ・シリーズ初期と並行して書かれた「女子プロレスラー小説」です。続編(短編集)もあって、そちらにも取り掛かっているのですが、ミロ・シリーズという探偵物(そして最後はドーロドロ)、その他のドロドロ物とは全く一線を画しています。

これは女性にはきっと楽しく読める作品でしょうね。ファイアボールこと火渡という圧倒的な強さを持つスター選手、その付き人で1勝もできない弱い近田。近田が語り部となって物語は進んでいきます。

理不尽ともいえる上下関係、ライバルとの日常、看板選手と付き人の関係、若手の寮生活。特に圧倒的な存在感をもつ火渡はかっこいい!彼女の性格やプロレスにかける姿勢は、ぐっときます。ネタバレに既になっていますが(読むと直ぐに誰もが気がつくとは思うので)、神取忍がモデルなのですが、一切本人にはインタビューとかもしていないので、存在感は神取、中身は桐野さんの想像だそうです。

私は女子プロってさほどは興味がないのですが、それでも神取は知っています。強さで圧倒感がある、そして女性の独特な世界というのは、とても珍しいテーマなので本当に面白く読めました。この本は圧倒的存在感を持つ火渡の副産物として、語り部の近田の存在もすごく面白い。あとがきで桐野さんが、結果として、この近田という登場人物が後で読んで気になってしまったと書いています。続編が楽しみです。

神取忍がベースにあると分かりつつ、男であるが故にか、もっと?綺麗な顔の女性ではないかと勝手に火渡を思い描いていたのですが、桐野さんが書いているように美しさを感じるのはむしろ神取さんのような人なんでしょうか。女性が男らしい女性に惚れる。そういう感覚が描かれた作品でした。

解説は鷺沢萌で、今度一度は読んでみようと思った作家で驚き。同い年で、2年前に自殺されているようで・・・




タグ:桐野夏生
posted by seven at 11:21| ニューヨーク ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 桐野夏生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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