桐野夏生「錆びる心」

内容(「BOOK」データベースより)
十年間堪え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。囚われた思いから抜け出して初めて見えた風景とは。表題作ほか、劇作家にファンレターを送り続ける生物教師の“恋”を描いた「虫卵の配列」、荒廃した庭に異常に魅かれる男を主人公にした「月下の楽園」など全六篇。魂の渇きと孤独を鋭く抉り出した短篇集。
内容(「MARC」データベースより)
劇作家にファンレターを送り続ける生物教師。十年間耐え忍んだ夫との生活を捨て、家政婦になった主婦。出口を塞がれた感情が、いつしか狂気と幻に変わる。孤独な男女の魂が抱える出口のない狂気を抉る作品集。
短編集は「ローズガーデン」
元々短編はあまり好きな方ではないのですが、それぞれの作品が何かのテーマで書かれたという統一感はないものの、タイトルに興味深いものなどありました。
実は、一番興味を持ったのは解説でした。中条省平という文芸評論家なんですが、「ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン」という言葉を思い浮かべ、日本語にすると「月の裏側」という言い回しでは、正確にニュアンスを伝えられないというものです。つまり、月の裏側と言ってしまうと単に表に対する裏という意味にしかならず、英語での「暗い」(ダーク)という意味がなくなってしまうというもの。桐野さんのこの作品には、人間のダーク・サイド、人間の静かな「狂気」が描かれているとありました。
この解説、上手いなと思います(前も別に書いたような)。私は桐野さんを「グッチャグチャ作家」だの「デストロイヤー」だの書いてますが、この人間のダーク・サイド=狂気を見事に描き出している稀有な作家だなと感心して嵌っていて、初期の短編集である、この「錆びる心」
さて、内容について、少々。
「虫卵の配列」
元物理教師と元編集者との再会。劇団主催者との恋を語る元物理教師の純粋なる恋愛が実は・・・不気味なタイトルとあっという最後に驚き。狂気を感じる。
「羊歯の庭」
煮え切らない男が羊歯の絵を描くことを生きがいに。昔の恋人と不倫関係になり、煮え切らない男は・・・ロマンティックが現実との乖離を生んでいることを思い知らされる。
「ジェイソン」
これは桐野さんには珍しいコメディ。軽快で面白い。自分で酒乱と気がつかない人の話。
「月下の楽園」
退廃した風景を愛する男の物語。人間の壊れっぷり、やってはいけないことをやってしまいたくなる心情、そして憎しみ。これも狂気のストーリー。退廃した風景が好きな人は死体愛好家なんだそうで。「コンナニナッチャッテ」という表現が怖い。
「ネオン」
「仁義なき戦い」マニアの若者が暴力団に。これも笑えるコメディ。新宿の裏通りのお話。
「錆びる心」
よくよく読むと、壊れた女、絹子の物語。家を出て擬似の家族でなごみ、結局は人の身勝手さを知る。結局は人は我侭なのか。
やはり桐野さんは江國さんと対極にいるような主人公(特に女性)を書くのが得意なようです。私にはどちらも面白いのですが、悪意や狂気を描かせると違いがはっきりと。例えば「動」の狂気は「グロテスク」
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